腰椎固定術

脊椎の働き 脊椎固定術 手術一般に伴う諸問題 術前からの準備 退院後の生活 困った時には 退院後の実際

脊椎の働き

脊椎は頭蓋骨の真下から尾骨にいたるまでのいわゆる「背骨」の部分です。上体を支え、日常生活や運動を円滑におこなったり、脊髄などの大切な神経を保護しています。

脊椎が骨折したり、また変形していたりすると、神経を圧迫して痛みや麻痺をきたします。

脊椎は椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨が連結したものです。椎骨と椎骨が関節のように動き、上体の運動を可能にさせます。

椎骨の円柱状の部分を椎体と呼び、頚、胸、腰の部分により形が異なります。腰椎にかかる負担は非常に大きいため、最も幅広く大きな形をしています。

椎体と椎体の間には椎間板があり、脊椎にかかる負担に対するクッションの役割を果たしています。


脊椎固定術

様々な原因によって神経が圧迫され、耐えがたい痛みや、日常生活を困難にするしびれや麻痺が、牽引などの治療でも治癒しない場合には手術をします。

手術療法は、神経を圧迫している骨を切除することで、神経への圧力を取り除いて症状を緩和します。これを除圧(じょあつ)といいます。

除圧だけでは再発する可能性のある不安定な脊椎や、除圧したことで不安定になった脊椎に対しては、患者さん本人の骨盤などから骨をとって移植したり、プレートやスクリューなどの金属を入れて固定します。これを固定術といいます。

腰椎固定術は、移植した骨が完全につくことで、初めて、絶えず大きな力の加わる腰椎を、長期的に安定させることができます。そのような状態になるまでには術後約6ヶ月という期間がかかります。


手術一般に伴う諸問題

他の手術と同様、脊椎固定術にも下記の諸問題が起こる場合があります。

  • 麻酔に伴うこと
  • 周辺の神経・血管・組織の損傷
  • 肺動脈塞栓症
  • 感染
  • その他、手術中の予測不可能な出来事に対して、医療処置が必要になることがあります。

脊椎固定術の合併症準備

  • 周辺の神経・血管の損傷
  • 深部静脈血栓(血管の中で血液が凝固する)、肺塞栓症:血液の流れが悪くなり、下肢が腫れたりします。重症になると呼吸が苦しくなります。
  • 固定用金属の折損:後に述べるような「してはいけない動作」などにより、まれに脊椎を固定している金属が折れたり、ずれたりする場合があります。
  • 細菌感染(化膿)
  • 人工材料に対するアレルギー反応:ごくまれに金属などにアレルギー反応を示す人がいます。

術前からの準備

手術の前から、「手術を受けたあとの自宅での生活」について考えてみましょう。

自宅の準備

腰への負担を少なくする為に、自宅で準備して頂きたいことがあります。

トイレは洋式

腰に負担がかからず、患者さん自身も安心して使用できるため、トイレは洋式が最適です。もしも、自宅が和式トイレの場合は、便座の上に置いて洋式と同様な姿勢がとれる、簡単な椅子が介護用品店などで市販されていますので利用されるとよいでしょう。

ベッドの使用が望ましい

ベッドでの寝起きは腰に負担がかからず楽なこと、また、手術部位の保護という点でも安心です。気をつければ畳での寝起きも可能ですが、術後6ヶ月間はベッドの使用をお勧めします。

ベッドの硬さは軟らかすぎず、病院のベッドと同じくらいの硬さが最適です。簡単に寝返りができ、ベッドの縁に腰をかけても沈み込まないものが良いでしょう。高さはあまり高くないほうが便利です。

ベッドを新たに購入する必要はありません。家族のどなたかがベッドを使用していれば、6ヶ月ほど借用するとよいでしょう。最近ではレンタルベッドもあります。介護用品店やデパートの健康用品売り場などでも相談できます。

だたし、お年を召した方には、末永くベッドを使用されることをお勧めします。

畳の部屋にも椅子を一つ

和室にも椅子を一つ置いておくと、疲れた時に簡単に休めるので大変便利です。椅子は低すぎず高すぎないものを選びます。できれば背もたれのあるものが良いでしょう。


退院後の生活

術後1~2ヶ月間は、基本的に家で入院しているつもりで過ごしてください。その後は徐々に活動時間を増やしていきます。ただし、起きていて疲れたら無理をせず横になりましょう。そのため、ベッドの使用が便利です。
立っている状態よりも、椅子に座っている状態のほうが腰に負担がかかります。腰への負担が最も少ないのが横になっている状態です。 自宅にいる場合は、昼食後に1時間くらい横になるように習慣付けるとよいでしょう。一日中起きているのは必ずしも良くありません。

してはいけない動作、気をつけなければならない動作

腰を過度に(45°以上)前に曲げたり、左右に曲げたり、ねじったり、そらしたりしてはいけません。床にものを落としたときは、周囲につかまりながらゆっくり膝を曲げてしゃがんで拾います。腰はゆっくり動かすことが重要です。

このことは完全に骨がつくまで(約6ヶ月間)守って下さい。これから説明する生活上の注意も、すべてこの動作を避けることが必要だからです。不用意に腰を動かすと、まれですが、固定用の金属が折れる可能性もありますので、十分注意してください。

日常生活について

  • 睡眠
    睡眠は十分にとりましょう。仰向けに寝る場合は膝の下に枕を入れると疲れにくいものです。横向きに寝てもかまいません。
    寝床は先に説明したように、寝起きする際に腰の負担を軽くするためベッドが最適です。

  • 洗顔・歯みがき
    術後早期の洗顔・歯みがきは、患者さんにとって不安な動作のひとつです。ゆっくり行えば、いつもと同じ姿勢で大丈夫です。

  • 食事の際の姿勢
    食事の際は洋式のテーブルが適しています。どうしても和式のテーブルになってしまう場合は、座る時にあぐらよりも正座をする方が良いでしょう。
    ただし、立ち上がったりしゃがんだりする時には、腰に無理な力が急激に加わらないように、テーブルに両手をついて、ゆっくり行うようにしてください。

  • トイレ
    先に説明したように、洋式トイレが望ましいでしょう。便座に座る時、立ち上がるときは、周囲の壁や取っ手につかまり、腰への負担を軽くします。

  • 家事
    食事の準備や、掃除などの家事をする場合もはじめは1時間~1時間半くらいで休憩をとり、15分位横になりましょう。
    掃除には、なるべく柄の長い掃除機を使って、中腰の姿勢は減らしてください。
    買い物の際は、カートなどを利用して、重いものを持たないようにしましょう。目安として2kg以上の重いものは持ち上げないようにするのがよいでしょう。

  • すわり仕事
    座って書き物をしたり、本を読む場合も、家事仕事と同様に時間を見計らって横になりましょう。
    椅子に座るときは、ソファーは避けて硬い椅子にしましょう。また、なるべく背もたれのある椅子が良いでしょう。
    足の血液循環や麻痺に影響することがあるため、術後2ヶ月間くらいは、足を組むのは避けましょう。

  • 会社での仕事
    病気の程度、手術の方法にもよりますが、事務仕事程度の軽作業に復帰できるのは、だいたい術後1~2ヶ月経ってからです。ただし、事務仕事であっても復帰直後はつかれるので、慣らし程度の半日仕事から始めるのがよいでしょう。
    就労については、必ず主治医と相談してください。

  • 性生活
    術後2ヶ月間は避けたほうが賢明ですが、どうしてもという場合は、患者さん自身が仰向けに寝た状態で、コルセットをして行ってください。

  • 喫煙・飲酒
    飲酒については、泥酔しない程度なら構いません。喫煙は骨のつきが悪くなる原因といわれています。できるだけ禁煙をしてください。

  • 体重管理
    体力を回復するために、適切な栄養の摂取は大切なことですが、腰への負担を軽くするため、太りすぎないように注意しましょう。

  • 入浴
    退院後の一番の不安は入浴と洗髪という患者さんが多いようですが、気をつけさえすれば心配ありません。
    コルセットをはずしたら、最初は浴槽に入らず、立った状態か、椅子に腰かけてのシャワーから始めてください。最近はシャワー用の椅子も介護用品店などで市販されています。
    この時、かがみすぎないように注意しましょう。コルセットをつけたままのつもりで行動するとよいでしょう。
    椅子に座る時、立つ時の注意は同じです。最初は家族に手伝ってもらうのも良いでしょう。
    背中の傷の部分は手でやさしく洗うようにしてください。

  • 車に乗る
    車に乗る時は、まず後ろ向きでシートに腰かけます。次に、膝を軽く曲げながら体の向きを90°回転し、車の進行方向を向きます。その際、必要以上に腰をひねらないように気をつけてください。
    車の運転は、痛み止めなどの内服薬を飲んでいる期間は禁止です。主治医に確認しましょう。

  • 骨粗しょう症の方に
    年齢の増加に伴って骨の弱くなった方や、カルシウム不足といわれた方は、バランスのとれた食事の他に、毎日牛乳を2本(400mlで十分です)と日光浴または昼間の散歩をお勧めします。

リハビリテーションについて

特殊なリハビリテーションは必要ありません。体力を戻すための電気治療や超短波などは、体の中に固定用の金属が入っているため、行ってはいけません。体の内部がやけどをする可能性があり危険です。
また、腰痛体操なども、金属が折れる可能性があるので、骨が完全につくまで禁止です。運動は歩行練習だけで十分です。適度な散歩は体の血液循環を良くして回復を早めます。はじめは不安かもしれませんが、勇気を出して外出してみましょう。

骨粗しょう症の方に

術後2ヶ月くらいま では、毎日午前・午後にそれぞれ1回ずつ、30分程度の散歩が良いでしょう。無理をせずに休み休み歩きましょう。主婦の場合は近所での買い物でも構いませ ん。最初は平地を歩くのが良いでしょう。長時間の階段練習は避けましょう。また、外出時には温かくして出かけましょう。
術後3ヶ月目くらいからは、散歩の時間を午前・午後にそれぞれ1回、1時間くらいを目標にします。徐々に慣らすことが大切です。あせらず我慢強く続けましょう。

コルセットについて

コルセットは術後6ヶ月間使用します。
医師の指示があるまで、起きているときは、入浴する時以外、常につけておきましょう。

  • 横になるときは必ずはずして下さい。コルセットは立っている時の姿勢にあわせて作ってあるため、寝ている時には無理がかかり、かえって悪い影響を及ぼすこともあります。注意してください。
  • 身につけるときは、直接肌に触れないように、必ず下着の上からつけてください。じかにコルセットをつけていると、皮膚がかぶれたり、手術した部分がこすれたりする可能性があります。
  • コルセットは時々クリーニングしましょう。水拭きか手洗 いします。いずれの場合も、横になっている間に日陰で干しておくと良いでしょう。乾きが悪ければ、ドライヤーなどを利用してください。

コルセットが破損した場合は、病院に連絡してください。


困った時には

背中がだるい、重苦しい、移植する骨をとったところが痛む

固定術特有の自然な現象で、通常の場合、気にならなくなるまで1年くらいかかることが多いのです。安静にして軽快するようなら心配ありません。

疲れやすい

これも、上記と同様に安静で軽快することが多く、心配ありません。多くの場合、その時点での体力を超えて活動してしまうのが原因です。活動のペースを下げることと、安静が大切です。
徐々に活動ペースを上げるように生活リズムを見直してください。

こんな時はすぐに受診するか、病院に連絡してください

  • 術前と同じ痛みが再発して、安静にしていても持続する場合
  • 38℃以上の発熱が続く場合
  • 手術したきずぐちがじくじくしたり、濡れてくるような場合


退院後の実際

退院時に確認すること

  • 薬:次の来院日まで足りているか確認してください。もしも不足していたら病棟スタッフにお知らせください。飲みきって終了する場合もありますので、必ず確認してください。
  • コルセット
  • その他、診察券、次回の受診予約票など

病院からの移動

  • 自動車の場合
    退院の際、自宅や他の病院への移動は、車が最適です。大きな車は必要なく、普通の乗用車で十分です。リクライニングを調整して、楽な姿勢でお帰りください。
    疲れたら途中で休みをとりながら移動しましょう。道路のこむ時間帯は避け、余裕をもって行動したほうが良いでしょう。
  • 列車・飛行機の場合
    遠距離で列車などを利用する場合は、必ず座席を予約して確保してください。また、必ずどなたかに同伴してもらってください。
    移動中のトイレの使用は大変ですので、途中で行かなくてもすむように気をつけましょう。やむを得ない場合は同伴者に手伝ってもらいましょう。寝台列車を利用できるようであれば、下の段のベッドを予約すると良いでしょう。

再診の心得

  • 日にちと時間を間違えないようにしましょう。
    ゆとりを持って来院してください。通常の場合、先にレントゲン撮影をしてから診察をします。受付の際に、レントゲンがあるかどうか確認してください。
  • 診察時に次のことを確認しましょう。
    ●仕事に就いて良いかどうか
    ●コルセットの装着が必要かどうか
    ●制限しなければならない活動は何か
    ●次回の来院日
このコーナーの情報は専門医の監修を頂いておりますが、患者様の状態は個人によって異なりますので、
詳しくは医療機関で診断を受け、主治医よりご説明を受けて下さい。

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