顎変形症(外科的矯正治療)

顎変形症とは 顎変形症の治療(外科的矯正治療)について 入院までの準備 手術 顎間固定 入院から手術まで 手術直後から翌朝まで 手術後の生活について 退院後の注意

顎変形症とは

顎の骨は、上顎骨じょうがくこつ(上の顎)と下顎骨かがくこつ(下の顎)、頬骨きょうこつ で形作られています。

顎変形症は、顎の骨の形・大きさの異常や位置バランスの崩れが原因 でおこります。顎のバランスが崩れているので、見た目の問題だけではなく、かみ合わせがわるくて上手く噛めない、話しづらいといっ た症状などの機能の異常を生じることがあります。

顎変形症

顎変形症の種類には、上顎前突症・下顎前突症・開咬症・非対称症・ 下顎後退症(小下顎症)などがあります。

顎変形症の種類


顎変形症の治療(外科的矯正治療)について

顎変形症による問題(かみ合わせが悪い、顎の変形など)を治すため に、原則的には手術前に矯正治療(術前矯正)をし、その後外科手術(顎矯正手術)をします。一般的に、骨の成長が止まる時期に手術を 行います。 手術後に最終的なかみ合わせの調整を目的に、矯正治療(術後矯正)が必要となります。したがって、治療は長期(数年)にわたることになります。

手術による効果

次のような効果が期待できます。

  • かみ合わせをなおし、食べ物が噛みやすくなります。
  • 発音がしやすくなります。
  • 審美的改善。

など

手術の方法

入院の上、全身麻酔で行います。手術は基本的に口の中から行いま すので、顔の表面に傷が残ることはありません。顎の骨を切って移動させ、かみ合わせや左右のバランスが整う位置に骨接合材(骨を とめるネジやプレート)で固定します。

手術の種類

手術の種類

骨接合材(プレート・ネジ)について

骨接合材には、吸収性のものと非吸収性のものがあります。 吸収性骨接合材は、主にポリ-L乳酸(PLLA)という体内に吸収される素材でできています。非吸収性骨接合材は、チタンという金属でできています。強い固定 力があるので切った骨をしっかりと固定できます。 また、チタンは生体せいたい親和性に優れているのでアレルギー反応などが起こる心配がほとんどなく、半永久的に体内に留置 していても問題がありません。 切った骨がつながり、おおよそ手術から6ヵ月~12ヵ月経過するとチタンのプレートやネジを取り出す(金属プレート、ネジ抜去術) こともできます。

プレート・ネジ

顎変形症手術の合併症

  • 傷口の感染
  • 骨への感染
  • 周辺の欠陥・神経への損傷
  • 唇・あご周辺の知覚異常(しびれ・感覚が鈍い)
  • 気道閉塞きどう へいそく
  • 誤嚥ごえん、肺炎
  • 骨接合材の破損(折れる)
  • 人工材料による生体の異常反応

全身麻酔に伴う諸問題

  • 麻酔の副作用
  • 肺炎
  • 感染
  • 輸血による合併症
  • その他、手術中の予測不可能な出来事に対して、医療 処置が必要になることがあります。


入院までの準備

1.全身状態を調べます。

呼吸機能の検査、胸のX線写真、腎臓、肝臓の機能、貧血の検査 などをして手術に問題がないかどうかを調べます。

2.既往歴きおう れきやお薬についてうかがいます。

これまでかかった病気や現在治療中の病気についてうかがいま す。喘息や糖尿病などの病気にかかったことがある、または治療を受けている方は、必ず主治医にお話しください。他の病院やク リニックからもらっているお薬があればすべて主治医・看護師にお見せください。薬の中には麻酔と併用できないものもあり ます。

3.自己血じこ けつを準備します。

手術の内容によっては、手術中や手術後に輸血が必要になります。 輸血による副作用を少なくするために、手術前に患者さんご自身の血液(自己血じこ けつ)を採血し、保存しておく方法も用いられます。 入院前に外来で採血をする場合と、入院中に採血をする場合があります。

4.歯科治療について

虫歯や歯周病は、手術後に感染をおこす危険性を高くします。手 術までに治療することが必要です。また、日ごろから正しいブラッシング方法で歯を磨くようにこころがけましょう。

■歯ブラシで
歯ブラシ

■歯間ブラシで
歯間ブラシ


手術

  • 手術室で全身麻酔をかけます。麻酔をかけた後、患者さんは 眠った状態になるので手術に伴う痛みを感じません。
  • 口の中の粘膜を切開(切ること)します。 あごの骨を切って移動させ、プレートとネジなどでとめます。
  • 切開した粘膜を縫合(傷口を合わせて縫うこと)します。
  • あごを固定し、腫れを防止するためにバンドをつけます。
  • 手術後、麻酔が半分覚めた状態で病室へ戻ります。

手術


顎間固定

顎間固定がくかん こてい けつについて-

原則的に顎間固定がくかん こてい けつを手術部位の安静のために行います。上の歯列 と下の歯列をワイヤー等で結び、固定します。(例えば、一定期間ワイヤーでとめた後、ワイヤーをとってゴム で固定します。ゴムは患者さんご自身がかけます。かけにくい場合は、鏡をつかってかけてください。) 顎間固定がくかん こてい けつをしている間は、口を開ける動作ができません。そのため、食事を流動食に変えます。歯ブラシを使えないので、水圧を使った 洗浄器具などを使って口の中を清潔にします。

顎間固定

顎間固定

ゴム固定

ゴム固定

顎間固定をはずした後は、口が開きづらくなっていますが、開口リ ハビリテーション(口を開けたり閉じたりする練習)で徐々に口を開けることができるようになります。


入院から手術まで

入院時、担当看護師が病棟の中をご案内します。手術前にいくつか 検査を行う場合があります。主治医・看護師の指示に従ってください。

●麻酔科医師・手術室看護師が訪問します。

麻酔科の医師、手術室看護師が、麻酔の説明にうかがいます。わ からないことや不安なことがありましたら、遠慮なくご相談ください。

●手術の前にそろえておくもの

手術後に使う口腔ケアの道具や食事用具など、事前に準備してい ただくものがあります。

●肌着

●ストロー

●バスタオル(約2枚)

●パジャマ(寝巻き類)

●湯飲み茶碗

●印鑑

●洗面用具

●スリッパ

●筆記用具

●箸

●ティッシュペーパー

 

●スプーン

●タオル(約3枚)

●入浴や洗髪について

手術前日まで、普通に入浴や洗髪ができます。手術後は主治医の 許可がでるまで、シャワー・洗髪・入浴ができません。手術前日に必ず入浴をすませてください。

●食事制限について

手術前日の夜( )時以降は、飲食をやめてください。毎日 飲んでいるお薬についても、看護師の指示にしたがってください。

手術当日

-手術入室まで-

食事はできません。

  • 指輪、ピアス、ネックレスなどのアクセサリーを全部取り外し ます。貴重品はご家族の方に保管してもらってください。
  • マニキュアをしている方は、爪の色がわかるようにマニキュア をとってください(なるべく入院前に行ってください)。つけ爪は入院前にはずしておいてください。
  • ( 時 分)
    着替えをすませてください。
  • ( 時 分)
    トイレをすませてください。
  • ( 時 分)
    (点滴をいれます・水薬をのみます)ベッドの上でお待ちください。
  • ( 時 分)
    看護師が手術室へお連れします。


手術直後から翌朝まで

●酸素吸入をします。

手術室から戻ってきたら、麻酔から完全にさめるまで酸素吸入 のマスクをつけます。主治医の指示ではずします。

●点滴をします。

点滴をして輸液や抗菌剤を投与します。主治医の指示ではずし ますので、点滴のチューブをひっぱったりしないでください。

●ドレーンチューブなどの留置

手術部位にたまった血液等を排出するために、傷口にチューブ 等が留置されることがあります。術後2日前後に抜去します。

●痰やつばをとります

口の中に痰やつばがたまったら、チューブで吸い取ります。 吸引用のチューブは傷口を避けることが必要です。はじめは看護師がお手伝いをしますので、痰やつばがたまったら看護師 をよんでください。チューブを使わないときは、チューブの途中を折り曲げて、クリップでとめてください。

手術直後から翌朝まで

手術後の不快事項

●尿の管が入っています

手術後は尿の管が入っていて、尿が体の外に自然に流れ出るよ うにしています。管は、患者さんの状態に応じて抜きます。管を無理にひっぱったりしないでください。

●次のような症状があらわれることがあります

鼻の充血、のどの痛み、はき気、嘔吐、手術した所の痛み*、発熱、 顔のはれ、顔色の変化

*痛み止めを使います。痛むときは我慢をしないで看護師にお話しください。

-腫れをなおすために-

手術後は傷口周辺が腫れるので、氷のう(氷と水をいれた袋)な どを作って患部を冷やします。

氷のう 氷のう


手術後の生活について

-食 事-

手術部位の安静のために、流動食から開始します。流 動食はマジックカップなどを使い、口のすきまから流し込むようにしてとってください。手術部位に負担が かかるので、強く吸い込まないでください。
状態によっては、鼻腔栄養(鼻からチューブを入れた状態によって流動食を摂取します)を行います。

手術直後から翌朝まで 手術直後から翌朝まで

-口の中を清潔にするために-

傷口の感染を予防するために、口の中を清潔に保つ必要がありま す。入院中は歯ブラシや歯間ブラシが使えないので、水圧で洗浄する器具を使って口の中をきれいにします。ポピドンヨードのう がい薬を使ってうがいをする場合もあります。

清潔

-洗髪、シャワー、入浴について-

患者さんの回復をみて、主治医が洗髪やシャワーを許可します。 主治医・看護師の指示にしたがってください。


退院後の注意

手術からしばらくの間は、患部に負担をかけないための注意が必要 です。

-食 事-

噛む動作は患部に力がかかります。かたいものを噛むと患部に大 きな負担がかかり、骨のずれや骨をとめるプレートが折れる原因にもなります。主治医の指示にしたがって、流動食から徐々に今までの食事に戻していきましょう。 野菜、たんぱく質、炭水化物、ミネラルなどの栄養素と1日に必要な摂取カロリーをとるために、ご家族の方といろんな工夫をし てみましょう。

【退院~退院後1ヵ月まで】

お粥、具を予め細かく刻んだ茶碗蒸し、プリンなどはそのまま食 べられます。パンは耳などの固い部分を切り取ってから、牛乳などに浸して柔らかくして食べます。うどんは1~2cmに切って柔 らかめに茹でて食べます。
その他の固めの食物はミキサー食にします。ミキサー食は、固形の食物をミキサーにかけて作ります。少し濃い流動食といった感 じになります。この間の外食はスープや豆腐料理など柔らかいものに制限されますが辛抱しましょう。外食をした日はカロリーや 栄養が不足するので、自宅での食事をいつもより十分摂るように心がけてください。

ミキサー食の作り方

ミキサー食

【1ヵ月~3ヵ月】

ミキサー食をキザミ食に変えていきます。キザミ食は、普通に調理 した料理を包丁やフードプロセッサーで細かくして作ります。
この間の外食は、箸などで細かくできるもの(麺類、ハンバーグ、オムレツ、コロッケ)や雑炊、ドリア、グラタンであれば摂るこ とができます。外食した日には自宅での食事をいつもより十分に摂ってください。

【3ヵ月経過後】

医師の許可で普通の食事がとれるようになります。固い食物は十 分に注意して摂るようにしてください。

食事をもとにもどすスピードや時期は個人差があります。必ず、 主治医の指示に従ってください。

市販されている食品のカロリー

白がゆ

1パック

約103kcal

梅がゆ

1パック

約95kcal

冷凍うどん

1人分

約326kcal

冷凍グラタン

1人分

約233kcal

冷凍ドリア

1人分

約220kcal

レトルトカレー

1箱

約231kcal

レトルトシチュー

1箱

約202kcal

カップスープポタージュ

1袋

約312kcal

カップうどん

1個

約426kcal

カップラーメン 生メンタイプ醤油

1個

約379kcal

カップラーメン 生メンタイプ味噌

1個

約427kcal

インスタント味噌ラーメン

1袋

約451kcal

インスタント醤油ラーメン

1袋

約450kcal

ヨーグルト(プレーン)

1個

約50kcal

プリン

1個

約112kcal

ゼリー

1個

約75kcal

栄養補助食品ドリンクタイプ

1本

約200kcal

スポーツドリンク

1本

約100kcal

アイスクリーム

1個

約276kcal

*あくまでも目安です。

-スポーツについて-

激しいスポーツは、あごに負担がかかります。スポーツやクラブ 活動をしている方は、主治医にご相談ください。

-退院後の通院について-

退院後、最初の定期検診までに下記のような症状があらわれた場 合は、病院を受診してください。

●患部の腫れが増して、痛みが強くなってきた場合

●かぜなどの症状がないのに、38℃以上発熱した場合

●傷口から膿がでている場合

医療保険について

顎変形症の入院費用・手術費用は、医療保険の対象になります。(差 額ベッド料などを除いた医療保険対象範囲)入院費用等について知りたい場合は、当院の医事課担当者、ソーシャルワーカーなどにおたずねください。

このコーナーの情報は専門医の監修を頂いておりますが、患者様の状態は個人によって異なりますので、
詳しくは医療機関で診断を受け、主治医よりご説明を受けて下さい。

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